明治22年、オスマントルコ帝国はオスマン提督を修好の特派使節として巡洋艦エルトゥールル号にて日本帝国に派遣、明治天皇に拝謁、オスマン帝国の最高勲章を奉呈せしめた。帰国の途に ついたエルトゥールル号は、9月16日、熊野灘にさしかかったが、串本は大島沖で、暴風雨で山なす怒涛に翻弄され、乗員の必死の奮闘にもかかわらず岩礁に激突、提督以下587名の生命が散華した。
怒涛の中を数名の乗組員が大島は樫野の灯台にたどり着き、異変に気づいた燈台守が緊急事態を村人に急報、村人は 荒れ狂う嵐の中を懸命に救助に、遺体収容にと献身し、69名の乗員の生命を救った。
昭和11年、トルコ政府は鎮魂の碑建立の議を決し、和歌山県がその委託を受けて、昭和12年6月、除幕式典ならびに追悼慰霊式典が執り行われた。
この事件は、それ自体が人間の魂に深く語りかける高級な意味でのロマンであり、感動的であります。串本の人間とトルコの間には余人の計り知ることのできない、深く強い絆がある。
このたび、トルコ共和国のアブドゥッラー・ギュル大統領夫妻が串本町を訪問し、トルコ軍艦エルトゥールル号追悼式典が行われました。

 

 

 
 
     
     
昭和11年、トルコ政府は鎮魂の碑建立の議を決し、和歌山県がその委託を受けて、昭和12年6月、除幕式典ならびに追悼慰霊式典が執り行われた、その慰霊碑。大統領に敬意を表して赤い絨毯が敷き詰められていた。
     
     
トルコ記念館。以上述べてきた略歴を実証するさまざまな歴史的記念物が展示されています。
トルコと遠く隔たった地に、このような立派なトルコ記念館が存在することが一種の奇跡です。大統領夫妻も無論しばしの時間館内をつぶさに見学されました。
大島の島民の皆さん。トルコ衣装で大統領夫妻歓迎の準備。
こういった行事には、えてして動員という印象がぬぐえないのが常ですが、そんな嫌味はまったく感じられませんでした。皆さんは、大統領一行の到着の遅れもあって、ずいぶん長時間待機しておられました。
大統領到着の際には、子供たちともども、千切れんばかりに、トルコと日本の小旗を打ち振っておられました。
     
     
和歌山県警のブラスバウンド。さすがにいい音で祭典を盛り上げておられました。
     
     
呉海上自衛隊隊員による儀状隊トルコ拝礼、そして、続いて、礼砲三発発射。耳を劈くような轟音三発。薬きょうが飛び散り、その迫力は、やはり、人間にとって根源的な、圧倒的な何かを持っている。
散華したトルコ海軍の軍人たちの答礼が、物理的には見えないが、その姿形が心には明確に見えてくる。
トルコ共和国大統領アブドゥッラー・ギュル大統領が会場に到着しました。トルコの国務大臣はじめ高官が随行しています。
     
     
トルコ大統領夫妻の着席。式典に出席した各界の代表の直立拍手の歓迎と敬意の表明のなか、大統領夫妻はトルコ国代表の尊厳をもって着席されました。
     
     
串本町、松原町長の追悼文奏上。地元町長として、驕ることなく、へりくだることなく、淡々と遭難したトルコ海軍兵士への哀悼と、彼らを救うべく荒れ狂う暴風雨のなか献身的に人間としての己の義務を全うすべく邁進した島民のエネルギーの爆発に言及されておられました。誠に感動的でありました。
トルコ国大統領として、大島島民の人間愛に感謝し、トルコと串本の、和歌山県の、日本国の友愛の永久に続かんことに言及されていました。
     
     
感動とは何でしょうか。大島の小、中学校生全員による追悼歌斉唱。一見場違いのような普段着姿の子供たちが歩み出て、追悼歌斉唱が始まる。はじめは、何の変哲もなく、合唱が始まる。やがて歌声がひとつになる。決してオーケストラを背景にしているわけではない。声楽の本格的な訓練をつんだ子供たちではない。制服もない。
しかし、観よ。あたり一面には咳払いひとつなくなる。子供たちの歌は完全に会場全体を支配し、万人に感動を与えていく。ブラスバンドや礼砲をしのぐ、圧倒的な人間性。これが、このページで最初に触れた真の意味でのロマンなのだ。この歌は、ページの末尾に作詞者の名とともに全文を記しておきます。
     
大島の樫野の磯。過去に587名の生命を飲み込んだ海も、静かに初夏の面影をたたえている。過去に何事もなかったかのごとく。そしてこの海は、遠く はるかはてなき水平線のかなた、トルコにまで延伸、接続しているのだ。   すべての式典を終えて、大統領夫妻が帰国に付くための特別車両への乗車を前に、つかの間、レセプションがあり、感謝の意を表明されるトルコ国大統領。 時に垣間見られる鋭い眼光には、一国の元首の存在感がありました。

 

 

 

トルコ使節艦エルトゥールル号 追悼歌

作詩 泉 丈吉

1.陽は落ちぬ 悲しびふかし
 はるけきか 一つ星なる
 海鳴りの いよいよ冴えきて
 白塔(はくとう)の ひらめきうつし
 堪えがたく 祈る声とも 

2.ああはるか 歳を経ぬるとも
 うち仰ぐ 波の旺(さか)らば
 とつくにの もののふあわれ
 船甲羅(ふなこうら) うらみに呑みて
 使節船(つかいぶね) とわに影なく
 

3.樫野なる 熊野の浦へは
 老い老いし 漁人(すなとりびと)ら
 指さして 声をひそめる
 風黒く 暴(あ)れの夜なりし
 ああわれら とわに語りめ

 

 

 

 

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