現在では、試金石という言葉は、一般に、なにかの価値や能力をためす基準や物事を示すものとして用いられています。しかし本来は、金の品位を鑑定するために、こすって、その条痕を見るための石そのものを指していました。那智黒石は古くから、この試金石として、最良のものだったのです。中生層および古生層に出来あがったこの石は、その粒子ひとつが0.1ミクロンという、きめの細かい、緻密な粘板岩です。それだけに、自然石としての美しさはもちろんのこと、さまざまな用途の加工品として、その名を成してきました。 2020年に那智黒石が地域団体商標に登録されました。 ◆商標登録第6225396号 那智黒石(なちぐろいし)◆ 〇商標権者:熊野那智黒石協同組合 〇登録日:2020年2月13日 |
原産地は、三重県熊野市神川町(下記写真の岩盤などで産出されます)で、神川町は「那智黒石の里」としてひろく知られています。 |
那智黒石が文献にあらわれる最初は「紀伊続風土紀」で、このあたりで採れる黒石は相当古くから知られていました、この地にある熊野本宮大社は、熊野信仰で有名な格式のある神社である。熊野速玉神社、那智大社のいわゆる熊野三山は平安の末期より「蟻の熊野詣」の時代で、いわゆる末法思想が起こり、仏法が衰え、社会は乱れて、世は末世と考えられ、人々は争って、西方浄土に往生することを願った。そして熊野詣での証として、その黒石をすくい、あるいは山脈に露出した熊野の山岳に似た黒石を掘り出し、熊野から帰ったあとも、往生の念仏を念じ、手すりあわせ磨いているうちに光沢が出てくるので、そこに「極楽世界」の荘厳さを思ったにちがいない。いずれにしても、その名の由来は、人々の口から口へと伝言でつたわりいつのまにか那智黒石と言われるようになったそうです。 |
那智黒石は碁石の黒石、硯、床置石、装飾品、那智黒成型品(地元では那智黒手磨き工芸品又はニュー那智黒と呼ばれています)などに加工され、伝統的な工芸品として親しまれています。那智黒石のキメ細かさと漆黒の持つ気品ある美しさには定評があり、実用品として、また贈答品や記念品としても喜ばれています。 |
那智黒石製品の主流である那智黒成型品(那智黒手磨き工芸品)は、那智黒石を粉末状に加工し、それに樹脂を硬化剤としてまぜ合わせたものを、型に流し込んで成型したものです。 この製品が現在、那智黒石製品の主流になった理由は、良質の那智黒石があまり産出されないようになってしまった事・板状に割れやすい性質の為に彫刻などによる立体的な加工をすることが困難・量産できなく高価になってしまう事からです。 この製品は同じ形状の物を原石製品より安価で量産できる上に那智黒石の重厚感、漆黒を失うことが無いという特徴を持っていたからです。 ※成型品といいましても手間暇かけて、すべて手作業で仕上げられています。 |
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